品質を決める「コバ」の仕上げ

■「コバ」とは?

今回は、革製品の品質を決める大きな要素の一つ、「コバ」の仕上げについてお話します。

「コバ」というのは革の切り口(裁断面)のことで、漢字では「木端」と書きます。

革の表面は「銀面(ぎんめん)」、裏側は「床面(とこめん)」といいますが、

横から見たとき(コバ面)はそれらが層になっているように見えます。

床面は裏地を貼ったり磨いたりすることで毛羽立ちを押さえますが、

コバも同様にきれいに処理する必要があります。

コバはよく手に触れる部分であり、目立つ部分でもあります。

このコバをどのように仕上げるかで、見た目の印象や手触り、最終的な品質に大きく関わるのです。

■コバの仕上げの方法

コバの仕上げは大きく分けると3つに分かれます。

「磨き仕上げ」「顔料仕上げ」「ヘリ返し」

①「磨き仕上げ」

当工房で基本的に採用している仕上げ方法になります。

簡単に言うと、コバに専用の仕上剤(天然糊、天然ワックス、樹脂などでできた液体)をつけて磨く処理です。

革の風合いを感じられるのが特徴で、手間をかけることで光り輝くほどの仕上がりになります。

この処理ができるのは「タンニン鞣し」で生成された革や一部の「コンビ鞣し」の革となります。

②顔料仕上げ

こちらは柔軟性のある専用の顔料(不溶性の塗料)をコバに縫って仕上げる処理です。

均一できれいな仕上がりになるのが特徴。革の色と全く別の色をおくこともでき、デザインの幅が広がります。

③ヘリ返し

革の端を薄く漉(す)き、その部分を床面革に折り返してコバ面を覆う処理方法です。

銀面と一体的な見た目となり、すっきりとした上品な印象になります。

どの仕上げ方法が優れている、ということではありません。

当工房では使用用途やデザインにより使い分けることとしています。

ちなみに、コバの仕上げ方法はそれぞれの職人が研究を重ね、自分がよいと思う方法を持っています。

「職人の数だけコバ処理方法がある」といっても過言ではありません。

■コバの「磨き仕上げ」の工程

★画像は準備ができ次第アップします。

では、当工房で最も多い仕上げ方法である「磨き仕上げ」の工程についてご紹介します。

※先述のとおり、これが絶対の正解!というわけではありません。

①革の裁断

革は「革包丁」やカッターなどで裁断します。

複数の革を重ねるときには、両方の革を大きめに裁断しておき、貼り合わせた後に一緒に裁断することもあります。

②少量の水を含ませて軽く磨く

水を含ませて磨くことで、繊維を収縮させます。

その際に繊維が横に押し出されて形状が変化するため、次の工程で削ぎ落す前にこの処理を入れています。

③ヘリ落とし

切り口には角がありますので、それを「ヘリ落とし」という道具で削ぎ落とします。

さきほどの②の工程で若干繊維がつぶされて外に広がってきますので、まとめて処理します。

この「ヘリ落とし」は切れ味が重要。毎回作業前には研ぐ工程を挟んでいます。

なお、作品のサイズ感・デザインにより削ぎ落とす幅を変えています。

④やすり掛け

この状態ではまだ角がありますので、紙やすりで滑らかにします。

⑤染色(場合により割愛)

ここで、革に近い色の染料を塗る場合があります。

芯通し染色の革(予め床面まで染色されている革)でない場合や、コバを濃くして見た目を引き締めたい場合に行います。

当工房では、ペン型の容器に調合した染料を入れることで、ムラなく染色できるように工夫しています。

⑥仕上げ剤をつけて磨く

「トコノール」という専用の仕上げ剤を塗り付けてまずは帆布で磨きます。

この帆布も予めトコノールで磨いておき、適度に滑らかな状態にしています。

表裏のコバの角がきれいな触り心地になるように意識して磨いています。

⑦やすり掛け~磨き作業を数回繰り返す

一回磨いただけでは、微妙に凹凸が感じられますので、④~⑥の作業を数回繰り返します。

仕上げ後半に磨くときには、帆布ではなく、木製の専用道具「ウッドスリッカー」で磨きます。

これにより、より滑らかでツヤのある仕上がりになります。

さて、いかがでしたでしょうか?

意外と多くの工程があるな、と感じられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実はそのとおりで、コバの処理はかなりの時間をかけています

それだけ、見た目や使い心地に影響があるということなのです。

当工房では、小さな小物から大物まで、すべての作品のコバを丁寧に仕上げています。

ぜひ革製品に触れたときには、「コバ」に注目してみてくださいね。

(書いてみると長くなってしまいました…!ここまでお読みくださりありがとうございました。)

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